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からだと発達研究会

  子どものからだは,彼らの動物性をたたえた場として本質的に能動的なものです。そのような子どものからだがこころや行動の発達とどう関わるのか,大人が構築した環境がそれとどう整合するのか,もしくは不協和を生んでいるのか。そういうことを視野に入れ,発達をクロスモーダルに考える場です。「食」「タッチ」「アフォーダンス」「事故」「ボディ・イメージ」など,からだと発達の重なる話題について自由に議論していきます。

 2か月に一度程度の勉強会をもつと同時に,学会大会時には適宜シンポジウムを開催したり科研費など申請したりなどの研究活動を展開していきます。そして数年後に皆の力を結集してこのテーマの単行本が出す予定です。

 このような取り組みは,心理学や医学・工学などといった様々な分野からの視線を重ね合わせることによってはじめて可能になるものです。どなたでも自由に参加できますので、関心がある方は根ケ山までその旨お知らせ下さい。

​過去の活動

1回目

日時:2012年6月9日(土) 15時~18時

場所:早稲田大学26号館302室

 

内容:

1)発足の趣旨説明(早稲田大学人間科学学術院教授 根ヶ山光一)

2)講演

演題「離乳食のfeedにみられる母子の行為調整」

講師:外山紀子

 

講師略歴:

津田塾大学教授。専門は認知発達。食を中心とする生物現象(食べ物の汚染,消化,成長,病気など)に関する幼児の理解,食事場面における母子・仲間間の相互交渉を検討している。「発達としての共食」(2008年,新曜社)など。

講演概要:

離乳は生後半年頃に始め,1歳半頃までに完了させるのが一般的とされている。離乳期は自分で食べる(自食)ための運動スキルが十分には獲得されていないため,養育者によるfeed(食べさせる)が主たる摂食形態となる。大人の場合,食べ手自身がに食べるものを選び,食具等を使って一口分だけとり(すくい),口まで運んで摂食する。しかし離乳食をfeedする場合,最後の摂食は子どもが担うものの(ここは代行しようがない),他のプロセスは母親(養育者)が代わりに行うことになる。母親が選び,とり(すくい),運んだものを,子どもが食べるのである。ここでは,母子間で「手」と「口」の分業が行われている。この共同作業は,どのようにして成立しているのだろうか。本発表では,母子3組の離乳食場面を縦断的に観察したデータ(離乳食開始直後から1年後まで)から,子どもの口・母親の手・母親の口の動きの頻度とパターンを分析し,母子間で巧妙な行為調整が行われていることを報告したい。

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2回目

 

日時:9月22日(土曜日)15時~18時

場所:早稲田大学人間総合研究センター分室 (高田牧舎2F)

 

講師:根ケ山光一

講演テーマ:発達の原点としてのからだ

 

概要:からだは能動性を本質とする。それを構成するのは環境とも疎通する資源であって,周囲の環境と積極的に資源交換をすることが生の能動性の原点である。からだの資源は時間とともに絶えず入れ替わり,まとまりの秩序もダイナミックに変容していく。その過程が発達であり,それは行動によって実現されるし,また行動を通じて環境と身体を結びつけるのがこころである。

 その発達は親や他の養育者,あるいはそれが提供する環境によって補佐されている。周囲に支えられつつも同時に,子ども自身もその周囲の資源を能動的に取り込んだり拒否したりしている。その能動性が子どもを「共生」的存在としているが,それはしばしば不整合やきしみの原因ともなる。そのような個としてのからだ,及びからだと環境間,からだとからだ間の関係性は,進化の産物として確固たる枠組をもっているのであり,それを考察することは子どもを理解することに直結する。

 つまりからだは,こころとは,行動とは,発達とは,環境とは,生とは,といった諸問題を考える最重要な切り口といえる。当日はこういったことのいくつかについて,食や接触,事故などを題材に参加者の皆さんと議論したい。それは,この研究会の存在意義を模索する機会ともなるであろう。

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第3回


 

日時:12月8日(土曜日)15時~18時

場所:早稲田大学人間総合研究センター分室 (高田牧舎2F)

 

講師:宮崎美智子先生

 

ご略歴:

青山学院大学文学部卒(鈴木宏昭研究室).

東京大学総合文化研究科博士課程修了(開一夫研究室).博士(学術).

現在,玉川大学脳科学研究所グローバルCOE研究員で2児(中学生・小学生)の母

 

講演テーマ:

自己認知における行為主体感の役割とその発達

 

概要:

本発表では,行為主体感の発達について行った2つの認知科学的アプローチによ

る研究について報告したい.

 

1.遅延自己像認知に見る行為主体感の役割

私たちは鏡やモニタに映った自己像を自分であると容易に判断することができる.

このような能力は自己像認知(Mirror self-recognition)と呼ばれ,乳幼児で

は2歳になるまでに獲得されると言われている.しかし,3歳までの自己像認知は

大変脆弱であることが分かってきた.たとえば,自己像にわずかな2秒の時間的

遅延を挿入するだけで自己像認知の指標であるマークテストの達成率が低下した

(Miyazaki & Hiraki, 2006).この結果は,自己認知を成立させる要因の一つ

として,自己像を自分の運動により操作できると気づく能力「行為主体感

(sense of agency)」が重要な役割を果たしていることを示唆する.

 

2.乳児における行為主体感の獲得過程の検討

行為主体感は自己認知の重要な要因であるが,乳幼児が獲得する過程について議

論されることはほとんどなかった.それは言語習得前・四肢のコントロールが未

発達な乳幼児では行為主体感の有無を内省や成人実験で行われているようなコン

トローラを用いた操作課題から評価することが難しかったからである.そこで我

々は,乳児で行為主体感の評価が可能な「アイ・スクラッチ課題」という新しい

視線随伴課題を開発した(宮崎ら, 2011; Takahashi et al., 2012).アイ・ス

クラッチ課題を用いた乳児の行為主体感の一連の実験的検討について報告する.

 

第4回

日時:2013年2月9日(土曜日)15時~18時

場所:早稲田大学人間総合研究センター分室 (高田牧舎2F)

 

講師:江尻桂子先生

講師ご略歴:お茶の水女子大学人間文化研究科人間発達学専攻(博士課程)修了,

博士(人文科学) ,茨城キリスト教大学文学部教授

 

講演タイトル:乳児における音声発達の基礎過程

関連業績:

江尻桂子(2000)「乳児における音声発達の基礎過程」風間書房,

Ejiri, K (1998)Relationship between rhythmic behavior and canonical

babbling in infant development. Phonetica. 54, 226-237

Ejiri, K. & Masataka, N. (2001) Co-occurrence of preverbal vocal

behavior and motor action in early infancy.  Developmental Science. 4,

(1) 40-48

概要:

生後1年間の音声発達における重要な変化は、「規準喃語」の出現である。この

喃語は、母音+子音構造を含み、多音節から成る(例:/bababa//mama/)。発表

者はこの喃語の出現メカニズムについて、自身の研究成果をもとに考察する。従

来、規準喃語の出現には聴覚の発達が重要であることが強調されてきたが、発表

者は、一連の研究結果をもとに、この喃語の習得には聴覚系だけでなく、運動発

達も関与している可能性を指摘する。



 

第5回からだと発達研究会

日時:2013年4月27日(土曜日)15時~18時

場所:早稲田大学人間総合研究センター分室 (高田牧舎2F)

 

講師:

掛札逸美先生(産業技術総合研究所デジタルヒューマン工学研究センター)

講演タイトル:

不慮の事故から子どもの命を守る―製品安全、消費者教育、認知バイアスの視点から

 

講演概要:

保育の現場で、あるいは保護者の視点から「子どもの命を守ること」や「安全」

に取り組んできたなかで、子どもの心やからだの発達が保護者にも、保育士にも、

そして日本社会全体にも、実はきちんと理解されていないことが見えてきました。

子どもの命を奪うような深刻な事故を防ぎつつ、からだと心の発達をしっかりと

促す、今ほどそのことが重要な時代はありません。「現場で働く健康心理学者」

の立場から、皆さまにさまざまなトピックを投げかけさせていただき、私自身、

勉強をさせていただきたいと思っています。よろしくお願いいたします。


 

講師略歴:

1964年生まれ。筑波大学卒業。財団法人東京都予防医学協会広報室に14年間勤務。

2003年、コロラド州立大学大学院心理学部応用社会心理学科に留学、健康心理学

を専攻。2008年2月、心理学博士号取得、5月に帰国。同6月~2013年3月まで、産

業技術総合研究所デジタルヒューマン工学研究センターに特別研究員として勤務。

情報ウェブサイト(子どもの傷害予防、保育園における子どもの安全、リスク・

コミュニケーション):http://daycaresafety.org/

専門:

傷害予防と健康の心理学

保育園における安全、リスク・コミュニケーション、保護者対応

著書:

『乳幼児の事故予防―保育者のためのリスク・マネジメント』(ぎょうせい)

『人と組織の心理から読み解くリスク・コミュニケーション』(宇於崎裕美さん

と共著。日本規格協会)

所属学会:日本保育学会、日本小児保健協会、日本子ども学会

委員:日本保育園保健協議会専門委員(心理)、日本小児保健協会傷害予防教育検討会委員

 

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第6回からだと発達研究会

 

日時:2013年7月13日(土曜日)15時~18時

場所:早稲田大学人間総合研究センター分室 (高田牧舎2F)

 

講師:平井真洋先生

略歴:東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了.博士(学術).日本学術振

興会特別研究員(生理学研究所),日本学術振興会海外特別研究員(Queen's

University, Canada),愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所研究員,途中,

日本学術振興会特定国派遣研究者(Central European University, Hungary)を

経て現在,自治医科大学医学部 先端医療技術研究センター 脳機能研究部門 准

教授.

 

講演タイトル:他者行為知覚の神経基盤とその定型・非定型発達変化

 

講演概要:本発表では,他者行為の知覚,具体的にはバイオロジカルモーション

と呼ばれるヒトの関節に装着した光点運動のみからでも性別・感情などの情報を

抽出可能な知覚現象を題材に取り上げ,脳波・脳磁図,眼球運動計測を用いた一

連の研究から導き出される階層的処理仮説について紹介する.さらに乳児・児童

ならびにウィリアムズ症候群患児,自閉症児を対象にした研究について紹介し,

バイオロジカルモーションを用いた社会的知覚・認知研究の今後について議論し

たい.

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第7回からだと発達研究会

 

日時:2013年9月28日(土曜日)15時~18時

場所:早稲田大学人間総合研究センター分室 (高田牧舎2F)

 

講師:宮岡徹先生(静岡理工科大学))

 

ご略歴:

1974年大阪大学文学部卒 名古屋大学博士(医学),浜松医科大学,大阪大学,

静岡理工科大学理工学部を経て,現在,静岡理工科大学総合情報学部教授

 

ご講演タイトル:ヒトの触覚システム

(概要)触覚情報が触受容器から大脳までどのように処理されて主観的認識に至

るのか,その情報処理過程の基本をまず話します.その後,私が最近行なってい

る研究についての話題を取り上げます.内容は,錯触(触覚の錯覚)の研究

と服を着た状態での触識別能力に関する研究です.私の講演時間は2時間程度あると

いうことなので,錯触のデモンスレーション装置(というほどのものではなく,

まあ,おもちゃです)もお持ちしますので,体験してみてください.

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第8回からだと発達研究会

 

日時:2013年11月30日(土曜日)15時~18時

場所:早稲田大学人間総合研究センター分室 (高田牧舎2F)

 

講師:高谷理恵子先生(福島大学)

 

ご略歴:1999年金沢大学大学院社会環境学研究科中退,教育学(修士),現在,

福島大学人間発達文化学類准教授,2000年~2003年まで科学技術振興事業団さき

がけ21研究員を兼任。

 

ご講演タイトル:自発運動を指標にした低出生体重児の発達支援

(概要)出生後間もない時期の早産児の自発運動から,発達予後がある程度予測

できるという研究があります。脳性麻痺のような明確な発達障害をもつ場合だけ

でなく,ボーダーラインの子どもたちの発達予後も,予測可能になってきていま

す。乳児の自発運動を指標にした発達予後予測の方法についてお話しするととも

に,明確な発達障害と診断はされないけれど,発達に難しさをもつ子どもたちの

支援について,私が最近行っている研究や活動,事例などをご報告いたします。

 

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第9回からだと発達研究会

 

日時:2014年2月15日(土曜日)15時~18時

場所:早稲田大学人間総合研究センター分室 (高田牧舎2F)

(詳細はこちらhttp://www.waseda.info/S5846.html

 

講師:佐藤将之先生(早稲田大学人間科学学術院)

略歴:秋田出身、2004年東京大学大学院工学系研究科建築学専攻

博士課程を修了し、博士(工学)を取得.学位論文のタイトルは、

「園児の社会性獲得の空間との相互作用に関する研究 -子どもの

環境行動原論-」.編著書として「フィールドワークの実践」ほか.

 

講演タイトル:社会性からみた保育空間

講演概要:

他者との関係に覚醒していく様態を「社会性」として子どもが一緒に

遊び始めたり、遊びを持続したり、離れたりする様態を研究した。

この時、子どもたちの姿勢(体譜),関係(関係譜),会話を音楽の

楽譜の様に記譜する方法を「遊楽劇」として分析を進め、子どもたち

のこれらの変化と空間との相互作用を考察した。近年の研究からは、

子どもの視点からみた環境設定とそのプロセスに関する分析や考察を

紹介し、環境や場所を通じた保育空間づくりについて論考する。

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第10回

日時:2014年6月21日(土曜日)15時~18時

場所:早稲田大学人間総合研究センター分室(高田牧舎2F)

(詳細はこちらhttp://www.waseda.info/S5846.html

 

講師:山口創先生(桜美林大学)

 

ご略歴:

博士(人間科学) 臨床発達心理士

早稲田大学大学院人間科学研究科博士課程修了

専攻は、健康心理学・身体心理学。聖徳大学講師を経て、現在は桜美林大学リベ

ラルアーツ学群教授

主な著書に、『愛撫・人の心に触れる力』(NHK出版)、『子供の「脳」は肌に

ある』(光文社)、『皮膚感覚の不思議』(講談社)、『皮膚という「脳」 』

(東京書籍)、『幸せになる脳はだっこで育つ』(廣済堂)など多数。

 

ご講演タイトル:子どもの心の発達を皮膚から考える

概要:

まず、身体心理学という身体と心の関係について捉える枠組みについて紹介しま

す。特に皮膚と心の関係について論じます。皮膚は自己と環境の境界としての役

割をもち、自己の概念と密接な関係があります。そこで皮膚への刺激が、摂食障

害や発達障害、認知症などの疾患に効果を発揮します。さらに抱っこやおんぶと

いった日常の身体接触は、子どもと養育者との関係にとり重要な意味を持ちます。

本講演では、子どもの健全な心の発達にとって皮膚や皮膚感覚に着目することの

意義について論じる予定です。

 

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第11回からだと発達研究会のご案内(参加自由)

 

日時:2014年8月16日(土曜日)15時~18時

場所:早稲田大学人間総合研究センター分室(高田牧舎2F)

(詳細はこちらhttp://www.waseda.info/S5846.html

 

講師:浅野大喜先生

(日本バプテスト病院  リハビリテーション科 室長)

 

ご略歴:

1997年,広島大学理学部退学

2000年,広島県立保健福祉短期大学理学療法学科(現、県立広島大学)卒業,理学療法士免許取得。

同年,京都にある日本バプテスト病院に入職。現在に至る。

現在、奈良にある畿央大学大学院神経リハビリテーション研究室に在籍。

 

ご講演タイトル:「身体表象の発達と子どものリハビリテーション」

概要:

脳性麻痺など運動障害を呈する子どもを対象としたリハビリテーションの臨床で

は,以前から神経成熟理論を基にした治療,アプローチが中心であり,そのため

異常な反射や残存した原始反射を抑制しながら,正しい動きを目指す方法が現在

でも主流となっている.またシステム理論の普及により課題指向型アプローチが

実施されることもあるが単なる動作練習に終始していることが多いようである.

これら従来のアプローチには,子どもの一人称的な身体知覚,身体表象という視

点が欠如しているように思われる.当院では,‘発達とはまず身体から出発し,

その身体を知覚,表象する過程が運動発達にとって重要である’という仮説に基

づき,運動障害をもつ子どものリハビリテーションを実践している.講演では身

体表象の発達に関する最近の発達科学的知見の紹介と実際の症例を通して運動発

達のメカニズムについて考えたい.

 

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第12回

日時:2014年11月29日(土曜日)15時~18時

場所:早稲田大学人間総合研究センター分室(高田牧舎2F)

(詳細はこちらhttp://www.waseda.info/S5846.html)タイトル:

 

講師:岡本依子先生(湘北短期大学)

 

略歴:

大阪出身,都立大学人文科学研究科博士課程満退。

専門は,親子コミュニケーションの発達,親への移行,地域子育てなど。現在,

湘北短期大学保育学科准教授。2009年~2年間,アメリカ・クラーク大学でサバ

ティカル。主な著書に,『エピソードで学ぶ乳幼児の発達心理学(新曜社)』

(共著),『親と子の発達心理学(新曜社)』(共編著)など。

 

タイトル:

子育てにおける親のからだ・子のからだ

~胎動日記と授乳日記にみられる親への移行

 

概要:

親ははじめから親だったわけではありません。子を持った女性が親へと発達する

プロセスの背景に,「からだ」がどのように機能するのかについて,考えてみた

いと思います。妊娠期における胎動日記の分析から,胎動への意味づけの変化と,

胎動という感覚を表すオノマトペの変化を追います。出産後には,授乳日記の分

析から,自身のからだと子どものからだへの視点を追いたいと思います。これら

の研究をもとに,親自身の子育て資源としての有限性と子どもの他者性について

述べたいと思います。

 

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第13回

日時:2015年2月28日(土曜日)15時~18時

場所:早稲田大学人間総合研究センター分室(高田牧舎2F)

講師:古山宣洋先生(早稲田大学)

 

<略歴>

1991年早稲田大学人間科学部人間基礎科学科卒業、同大学大学院人間科学研究科

健康科学専攻修士課程終了1993年、2001年シカゴ大学大学院・社会科学研究科心

理学専攻・博士課程了.情報・システム研究機構国立情報学研究所准教授、総合

研究大学院大学准教授(併任)を経て、2014年より早稲田大学人間科学学術院教授.

シカゴ大学David McNeillジェスチャ研究室での留学時代より,発話と身振りの

協調に関する心理言語学的ならびに生態心理学的研究に従事.日本認知科学会会

員,国際生態心理学会理事.日本生態心理学会理事.Ph.D.(心理学)

 

<講演タイトル>

ジェスチャ:生態学的アプローチと社会文化的アプローチの交差点

 

<概要>

本講演の前半では、私がこれまでに行ってきたジェスチャに関する研究の一部、

特にジェスチャが談話情報の組織化にどのように関わっているのかについてお話

します。ここで基盤となるのは、ヴィゴツキーの社会文化的アプローチの考え方

に基づいた成長点理論(McNeill, 2005)ですので、そのことも含めてお話しま

す。

後半では、ジェスチャ研究に、生態心理学で議論されているマイクロスリップの

観点を取り入れた研究について紹介させていただきます。また、時間に余裕があ

れば、ジェスチャ研究の基礎となっている同期(発話-ジェスチャ間、ジェスチャ

間)の考え方について批判的に考察し、生態心理学における協応の考え方を採り

入れて研究する必要性について議論します。

 

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第14回

日時:2015年5月16日(土曜日)15時~18時

場所:早稲田大学人間総合研究センター分室(高田牧舎2F)

(詳細はこちらhttp://www.waseda.info/S5846.html

 

講師:細馬宏通先生(滋賀県立大学)

 

略歴:

1960年生まれ。

京都大学大学院理学研究科博士課程修了(理学博士:動物学)。現在、滋賀県立

大学人間文化学部教授。日常会話や協働作業における身体動作研究、視聴覚史研

究を行っている。著書に『うたのしくみ』(ぴあ)、『ミッキーはなぜ口笛を吹

くのか』(新潮選書)、『今日の「あまちゃん」から』(河出書房新社)、『絵

はがきの時代』『浅草十二階 増補新版』(青土社)、『活動としての文と発話』

『ことば・空間・身体』(共著/ひつじ書房)など。

 

タイトル:コミュニケーション場面における発話と身体動作の時間構造

 

講演概要:私たちは言語活動を身体活動と対比させて考えがちです。しかし、日

常会話や協同作業場面での発話行為を観察していくと、わたしたちのことばは、

その内容はもちろんのこと、時間構造のレベルでも身体動作とさまざまな関係を

持っており、そのことがコミュニケーションに重要な役割を果たしています。本

講演の前半ではまず、日常会話の質問と答えに関する簡単な場面で人がどのよう

に動いているかを紹介しながら、発話と動作の時間構造がどのように相補的に関

わっているかを示します。講演の後半では、伝統芸能における唄と掛け声のフィー

ルドワーク研究を紹介しながら、ことばのプロソディ構造が協同作業の時間構造

とどのように関わっているかを考察していきます。時間の余裕があれば、介護研

究、遊び場面の研究、共同読書場面の研究など、さらに具体的な事例を紹介でき

ればと考えています。

 

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第15回 からだと発達研究会

 

日時:2015年8月8日(土曜日)15時~18時

 

場所:早稲田大学人間総合研究センター分室(高田牧舎2F)

(詳細はこちらhttp://www.waseda.info/S5846.html

 

<講師>

小嶋秀樹(宮城大学)

 

<プロフィール>

1966年東京生まれ.1994年,電気通信大学大学院電気通信学研究科博士後期課

程修了(博士(工学)).同年,郵政省通信総合研究所研究員,情報通信研究

機構主任研究院,MIT 人工知能研究所滞在研究員などを経て,2008年から宮城

大学事業構想学部教授.2013年から副学長兼任.

「現象学と二十一世紀の知」(分担執筆・ナカニシヤ出版),

「ロボットの悲しみ」(共著・新曜社)など.

 

<タイトル>

ロボットによる自閉症療育支援から見えてきたこと:

心の「へだたり」と「つながり」

 

<講演概要>

 自閉症の子どもたちは,人との関わりに難しさをもつ一方,玩具や機械といっ

たモノの扱いを得意とすることが多いようです.ここから療育支援ロボットを開

発するためのヒントが得られます.モノとの安心できるやりとりをとおして,自

閉症児からの探索的な関わりを引き出し,それと並行して,人とのアイコンタク

トや共同注視,感情のやりとりといったヒトらしさを織り込ませていくというも

のです.

 本発表では,このような背景から生まれた療育支援ロボット「キーポン」と,

それを活用した自閉症研究について紹介します.子どもからの関わりに,モノら

しく予測可能な反応を返すことも,ヒトらしく視線や表情で「つながる」ことも

できるキーポンが,子どもたちとどのようなやりとりを繰り広げたのか,また,

子どもたちがキーポンをどのように捉え,キーポンとの関係をどのように発展さ

せていったのかを検討したいと思います.

 また発表の後半では,このような実践から得られた知見を踏まえて,モノの扱

いを得意とする自閉症児が,なぜヒトとのコミュニケーションに問題を抱えるの

かという疑問について,「認知粒度」という観点から論じたいと思います.認知

粒度とは世界を分節する解像度のような概念です.これが自閉症者と定型発達者

の間で異なっているという仮説を紹介し,さらに定型発達者が認知粒度を共有し

ているがゆえに言語や文化が成り立っているという仮説についても議論したいと

思います.

 

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日時:2015年10月31日(土曜日)15時~18時

 

場所:早稲田大学人間総合研究センター分室(高田牧舎2F)

(詳細はこちらhttp://www.waseda.info/S5846.html

 

講師:山本尚樹先生(立教大学現代心理学部助教)

 

<プロフィール>

2004年武蔵野美術大学造形学部卒業。2013年東京大学大学院教育学研究科博士課

程修了。博士(教育学)。2014年より立教大学現代心理学部助教。

・山本尚樹(2014).運動発 達研究の理論的基礎と課題:Gesell, McGraw,

Thelen,三者の比較検討から.発達心理学研究,第25巻,2号.

・山本尚樹(2013).成人男 性を対象とした寝返り動作における微視的発生プ

ロ セスの検討:乳児の初期寝返り動作との発達的関連から.発達心理学研究,第24

巻,3号.

・山本尚樹(2011). 乳児期における寝返り動作獲得過程の縦断的観察. 発達心理

学研究, 第22巻, 3号.

 

<講演タイトル>

運動発達における個の問題

 

<概要>

本講演の前半では運動発達研究の理論について検討する。1980年代にエスター・

テーレンが運動発達研究にダイナミック・システムズ・アプ ローチ(DSA)

を導入して以降、その知見は知覚‐行為発達研究の一つの基盤となっている。こ

のテーレンのDSA理論を、ゲゼルやマ グローらの古典研究の延長線上に位置

づけながら研究史的に問い直していくことで、運動発達研究の理論枠組みについ

て検討してきたい。 その上で、テーレンの理論的貢献は、イントリンジック・

ダイナミクス概念によって個の発達の問題を提起したことにあるということを確

認したい。

後半では、テーレンのイントリンジック・ダイナミクス概念を軸に、講演者が

行った乳児 の寝返りの発達研究、成人の寝返り研究について紹介していきた

い。また、それに関連して最近行っている、乳児のうつ伏せでの移動発達 の研

究について紹介していく。

 

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第17回からだと発達研究会のご案内

 

日時:2015年12月26日(土曜日)15時~18時

 

場所:早稲田大学人間総合研究センター分室(高田牧舎2F)


 

講師:丸山 慎先生(駒沢女子大学)

 

略歴:早稲田大学人間科学部卒業。東京大学大学院教育学研究科博士課程修了

(博士・教育学)。現在、駒沢女子大学人文学部心理学科 専任講師。専攻は

「身体性認知科学」など。身体を基盤とする発達のメカニズムとその連続性につ

いて日々考えている。『アート/表現する身体:アフォーダンスの現場』(分担

執筆,東京大学出版会)、『知の生態学的転回1 身体:環境とのエンカウンター』

(分担執筆,東京大学出版会)など。

 

タイトル:身体・音楽・発達 -“からだ”に表現の基盤を観る-

 

講演概要:「身体は認知的活動にどのようにかかわっているのか」というのが、

私が取り組んでいる研究課題です。今回の講演では、音楽の演奏というヒトの高

度な認知活動を中心的な話題とし、演奏者(特に指揮者)の身体スキルと音楽表

現との関係について、これまでに私が行ってきた研究を中心に(その周辺的な知

見も含めて)紹介をさせていただきます。それらは音楽心理学、生態学的音響学、

身体性認知科学、そしてダイナミカル・システムズ・アプローチなど、多様な視

座との関連を持つものです。「音の表現の基盤となり、音の価値を探索し、発達

し続けるものとしての身体」を描き出そうとする試みが、果たして認知と身体と

を結びつける根拠になり得るのか、そして「身体とその運動のダイナミクスこそ

が、音の表現を生み出す契機である」という私の仮説は、今後どのような展開の

可能性をもっているのかといったことを議論させていただきたいと思っています。

 

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第18回からだと発達研究会(参加自由)

 

日時:2016年2月20日(土曜日)13:00〜16:00

場所:早稲田大学大隈会館305

  地下鉄東西線早稲田駅より徒歩7分

  地下鉄副都心線西早稲田駅より徒歩15分

  都電荒川線早稲田駅より徒歩3分

 (http://www.waseda.jp/somu-d2/kaigishitsu/#link7


 

タイトル:

 「親子関係の脳科学:子育てと愛着の脳内メカニズム」

 

講師:黒田公美先生

(理化学研究所脳科学総合研究センター親和性社会行動研究チーム・チームリーダー)

ご略歴:

大阪大学医学部卒業。大阪大学医学部付属病院精神神経科医員。

大阪大学大学院医学系研究科博士課程修了。カナダMcGill 大学精神神経科学部博士研究員。

現在、理化学研究所 脳科学総合研究センター 親和性社会行動研究チーム チームリーダー。

マウス・サル・ヒトを対象に親子の養育と愛着の脳神経機構を研究。

「親子関係をはぐくむ脳のはたらき」『脳を知る・創る・守る・育む』(2014)など。

 

講演概要:

 哺乳類の親には子に授乳し、清潔にし、守り育てる「養育行動」に必要な脳内回路が備わっている。しかし実際の育児を行うにあたっては、生得的な脳内回路だけでは不十分で、育児の先輩を見習う学習や、実際に子どもと関わる中で身に着けていく経験によって神経回路が強化・調節される必要があることが、ヒトだけではなく他の哺乳類においても報告されている。マウスでは、前脳の視床下部の前方にある内側視索前野(MPOA)は養育行動に必須の神経核であり、育児体験によって活性化される。さらにオスではこの部位の神経回路がメスとの交尾や同居によって活性化され、子に対する攻撃性を減少させ、父性を目覚めさせることが、明らかになりつつある。

 一方で子どもの側からも、親を覚え、後を追い、シグナルを送り、乳を吸うなどの「愛着行動」を積極的に行っている。親が養育を放棄したり暴力を振るう場合でさえ、離乳前には子の側から親を回避することはなく、親をなだめ、一層強くしがみつき、なんとかよい関係を取り戻そうと努力することが多い。こうした愛着行動に関わる脳内回路については未知の部分が多いが、親によって運ばれる際に子が協力して泣き止み大人しくなる「輸送反応」を手掛かりに、研究が進みつつある。

 本日は、これらの親子関係を支える親子双方の脳内メカニズム研究についてご報告したい。

 

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第19回からだと発達研究会のご案内

 

日時:2016年5月14日(土曜日)15時〜18時

 

場所:早稲田大学人間総合研究センター分室(高田牧舎2F)

(詳細はこちらhttp://www.waseda.info/S5846.html <http://www.waseda.info/S5846.html>)

 

講師:加藤麻樹先生(早稲田大学)

 

略歴:早稲田大学人間科学部卒業後,早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了,博士(人間科学,早稲田大学。早稲田大学理工学総合研究センター嘱託,九州看護福祉大学看護福祉学部助手,長野県短期大学准教授を経て2013年4月より現職。

 

専門:生活人間工学。日常生活をとりまく環境と製品の構造と機能を人間工学的に評価し,安全性,効率性,快適性を充足する生活空間を構築することを目的とする研究を行っている。

 

講演タイトル:日常生活上の不慮の事故防止と子どもの発達との関連性について

 

講演概要:日常生活において発生する不慮の事故は致命的な結果につながる場合があり,その原因として交通事故の割合が最も高く,その他生活圏における転落や転倒,溺死等があげられる。今回の研究会では不慮の事故を防止するための取り組みのうち,遊具と自転車の安全性をとりあげ,子どもの発達との関連性について議論させていただきたい。昨今設置される公園遊具の安全性は専門家により検証が施されるようになったことで従来よりも危険性が低下した一方,危険との接触体験が減る影響を考慮しなければならない。遊具からの転落事故にかかる研究をもとに公園遊具のあり方について議論していただきたいと思っている。また自転車は年齢を問わず利用できる交通機関である一方で昨今の普及によりその危険性に関心が集まってきた.交通行動は小さい頃からの教育の影響が大きいことから,海外事例の調査結果より子どもの発達に応じた交通安全教育について議論していただきたいと思っている。

 

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第20回

 

日時:2016年9月3日(土曜日)15時〜18時

 

場所:早稲田大学人間総合研究センター分室(高田牧舎2F)

(詳細はこちらhttp://www.waseda.info/S5846.html<http://www.waseda.info/S5846.html>)

 

講師:岸本健先生(聖心女子大学 准教授)

 

略歴:大阪大学卒業後,大阪大学大学院人間科学研究科修了,博士(人間科学,大阪大学)。日本学術振興会特別研究員(DC2,PD),聖心女子大学専任講師を経て2014年4月より現職。

 

専門:比較発達心理学。ヒトやチンパンジーにおける親子間の相互作用の観察から,ヒトの乳幼児の社会的認知能力,特に身振りによるコミュニケーション能力の発達と進化について解明することを目指している。

 

講演タイトル:なぜ乳幼児は指さしするのか?―乳幼児による指示的ジェスチャーの発達と進化

 

講演概要:1歳齢前後の乳幼児は十分に言葉を操ることができない。しかし,この時期の乳幼児は,おもちゃを指さす,あるいは手にとって相手に見せるといった指示的ジェスチャーにより,周囲の大人と意思疎通を図ることができる。1歳齢児によるこういった指示的ジェスチャーの産出を可能としている社会的認知能力や,動機づけについて,これまでに多くの研究成果が公表されている。その一方で,乳幼児による指示的ジェスチャーの獲得および発達のプロセスについては研究が不足している。

 

本講演ではまず,これまでに明らかとなった乳幼児による指示的ジェスチャーの産出を支える社会的認知能力と動機づけに関して簡単にレビューする。次に,乳幼児による指さしの獲得・発達に,乳幼児の社会的環境の与える影響に関して,講演者の行った研究を3つ,紹介する。まず,母親による指さしが,乳幼児による指さしの発達を促進するかどうかについて,横断的・縦断的に検討した研究 (Kishimoto, submitted) を紹介する。次に,乳幼児の指さしの発達に,年上のきょうだいの存在の与える影響について検討した研究 (Kishimoto, in press)を紹介する。最後に,なぜ言葉を操る前の乳幼児が指さしをせねばならなくなったのか,その進化的背景について,ふたごのチンパンジーによる,母親以外の大人との相互作用の中で観察された身振り産出からの考察 (Kishimoto et al., 2014) を紹介する。これらを通して,乳幼児の指さし研究の今後の方向性について,参加者の皆様と議論を深めたい。

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第21回

日時:2016年12月23日(金曜祝日)15時〜18時

 

場所:早稲田大学人間総合研究センター分室(高田牧舎2F)

(詳細はこちらhttp://www.waseda.info/S5846.html<http://www.waseda.info/S5846.html>)

 

講師:三嶋博之先生(早稲田大学人間科学学術院)

 

略歴:早稲田大学大学院人間科学研究科修了。博士(人間科学)。日本学術振興会特別研究員,早稲田大学人間科学部助手,福井大学教育地域科学部助教授を経て,2007年4月より早稲田大学人間科学学術院准教授。

 

専門:生態心理学,生態学的人間情報学。目的的行動,特に自動車等の移動行為の知覚制御。

 

講演タイトル:移動行為とアフォーダンス:速く安全に移動するための光学的情報とその利用

 

講演概要:前半では,「アフォーダンス」概念の萌芽を認められるという点でJ・J・Gibsonの初期の研究の中でも特に重要とされるGibson & Crooks(1938)を概観し,後のアフォーダンス理論への展開を支えた「光学的流動とその不変構造の発見」の意義について議論したいと思います。後半では,移動行為全般を支える視覚情報の代表例について共有しつつ,高速で移動するための道具である自動車を対象としたドライビング研究で得られたデータについて紹介します。交通安全対策への生態心理学の応用という観点から,D・A・ノーマンによる「(ソーシャル)シグニファイア」のアイディアについても検討します。

 

本話題提供のための参考文献

三嶋博之. (2016).  アフォーダンス理論と交通. IATSS Review, 40(3), 164-169.

 

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第22回

日時:2017年3月5日(日曜)15時〜18時

 

場所:早稲田大学人間総合研究センター分室(高田牧舎2F)

(詳細はこちらhttp://www.waseda.info/S5846.html <http://www.waseda.info/S5846.html>)

 

講師:高梨 克也先生

京都大学大学院情報学研究科



 

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第23回

日時:2017年9月1日(金曜)15時〜18時

 

場所:早稲田大学人間総合研究センター分室(高田牧舎2F)

(詳細はこちらhttp://www.waseda.info/S5846.html <http://www.waseda.info/S5846.html>)

 

講師:武田尚子先生(早稲田大学人間科学学術院)

 

ご略歴:お茶の水女子大学文教育学部卒業、東京都立大学大学院社会科学研究科博士課程修了、博士(社会学)。武蔵大学教授を経て、2013年に早稲田大学着任。専門分野は人口移動、地域社会学、都市社会学、質的調査方法。主要単著(学術書):『マニラへ渡った瀬戸内漁民』、『瀬戸内海離島社会の変容』、『20世紀イギリスの都市労働者と生活』。一般書:『もんじゃの社会史』『チョコレートの世界史』『ミルクと日本人』など。

 

ご講演タイトル:「ミルク」から探る近代東京の格差と貧困家庭児童への社会政策

 

概要:近代東京で重工業が成長したのは明治30年代の日露戦争前後である。産業化の進展によって、都市における格差が進行し、牛乳の需要にも格差が反映された。つまり、近代産業の成長によって安定した所得の階層は牛乳飲用を生活習慣に組み込んでいったが、都市下層の生活構造に牛乳飲用は無縁のものであった。このような生活構造、食習慣の階層的相違は各層とくに子どもたちの体格、身体強弱などに影響したと推察される。

 

 近代の産業化・都市化にともなう格差進行の帰結は、大正期に入るとあらわになる。大正期の日本社会が抱えていた国家的課題の一つが乳児の高死亡率である。内務省衛生局では大正5年、保健衛生調査会を設置し、ヨーロッパの人口政策の動向を鑑み、文明国にふさわしい国民の健康状態を実現するため、国民の健康に関するデータを収集していった。大正7年には米騒動が発生し、全国的に食料を求める運動が

広がり、社会政策的対応が不可欠であることが示された。

 

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第24回

日時:2017年2月16日(金曜)15時〜18時

場所:早稲田大学人間総合研究センター分室(高田牧舎2F)

(詳細はこちらhttp://www.waseda.info/S5846.html

講師:小島康生先生(中京大学)

略歴:大阪大学大学院人間科学研究科修了。博士(人間科学)。大阪大学人間科学部助手,中京大学心理学部准教授を経て,2013年4月より中京大学心理学部教授。

タイトル:「親子の身体的隔たりにかかわる要因」

 

 「住居内での家族の空間布置からみた親子の身体的隔たり」「乳児のケガ防止の対策」「母子の外出」「大型ショッピングセンターでの親子・家族の関わり」の各テーマについてデータに基づく話題提供をおこない,それをまとめて行動学的観点から親子の身体的隔たりに関する考察をした。

 

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第25回

 

日時:2018年4月21日(土曜)15時〜18時

 

場所:早稲田大学人間総合研究センター分室(高田牧舎2F)

(詳細はこちらhttp://www.waseda.info/S5846.html

 

ご講演タイトル: 言語行為におけるこころの理論:1-3歳児の日仏比較研究 

 

講師: 則松宏子 (NORIMATSU Hiroko)先生

Toulouse Jean Jaurès大学、発達心理学部 &

CLLE-LTC (Cognition, Langues, Langage, Ergonomie)認知・言語・人間工学研究所

准教授

 

ブラン ラウル (BLIN Raoul)先生

CNRS (仏国立科学研究所) &

CRLAO (Centre de Recherches Linguistiques sur l'Asie Orientale) 東洋言語学研究所

研究員 宏子 & ブラン ラウル 

 

ご講演概要 

 

こころの理論は従来誤信念課題を通じて4歳ころから獲得されるという知見が広く共有されているが、日本の子どもたちのデータでは、同課題を通じて5歳半から6歳近くで半数以上の子が通過するという結果が複数得られている(Naito & Koyama, 2006; Moriguichi et al. 2010など)。 このような過去の研究蓄積から、1)こころの理論は4歳以下の子どもたちには観察されないのか、2)上記のような文化差はどこからくるのか、という二つの疑問に答えるため、ここ数年取り組んできた日仏の1-3歳児を対象とした実験データを紹介する。 

 

第一部では、従来の課題における言語表現の役割について概観し、我々の実験プロトコルのもとになった言語モデル(Blin, 2009, 2017)を簡単に紹介する。第二部では、3歳以下の子どもたちにおけるこころの理論研究、および文化差を説明するための異なる仮説を概観し、新プロトコルを使用した一連の実験データ(Norimatsu et al., 2014, Guillon et al., 2015,  in preparation) を現在進行中のものも含め紹介する。 

 

文献 

        • Blin, R. (2009). Introduction à la linguistique formelle. Paris, Hermès sciences, col. STIC.

        • Blin, R. (2017). Résolution de l’ambiguïté des noms propres par utilisation des croyances sur les connaissances d’autrui - application au prénom. (Resolving the ambiguity of proper nouns by using beliefs about others' knowledge - application to the first name).  Lingvisticae Investigationes, 40 (2), 200-227. 

https://hal.archives-ouvertes.fr/hal-01674582/document

        • Guillon, Q., Bouvet, L., Norimatsu, H., Kruck, J., Voltzenlogel, V. & Rogé, B. (2017). La désambiguïsation du nom propre chez les enfants présentant un  trouble du spectre de l'autisme. (Disambiguation of proper nouns in children with autism spectrum disorder). Communication affichée au 10ème Colloque International RIPSYDEVE (Réseau Interuniversitaire de Psychologie du Développement et de l'Education), 15-16 juin 2017, Aix-en-Provence, France.

        • Norimatsu H., Blin, R., Hashiya K., Sorsana Ch. & Kobayashi H. (2014). Understanding of others’ knowledge in French and Japanese children: A comparative study with a disambiguation task on 16–38-month-olds. Infant Behavior and Development, 37(4), 632-644.

 

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第26回からだと発達研究会のご案内

 

どなたでも参加自由(無料)です。


 

日時:2018年6月30日(土曜)15時〜18時

場所:早稲田大学人間総合研究センター分室(高田牧舎2F)

(詳細はこちらhttp://www.waseda.info/S5846.html

 

講師:近藤清美先生(帝京大学文学部心理学科教授)

講演タイトル:アタッチメントと甘えをめぐる文化の問題

概要:わが国の親子関係について論じるとき,アタッチメントとともに「甘え」も重要な概念である。

アタッチメントの文化普遍性の議論において,わが国ではアタッチメントよりも甘えの方が,母子関係を記述するのにふさわしいという議論がなされたことがある。そこで,今回の発表では,土居健郎の「甘え」の概念を吟味し,アタッチメントと甘え

の関係を整理する。また,発表者が行った札幌縦断研究から,アタッチメント概念の文化普遍性について論じる。

 

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第27回

日時:2018年9月14日(金曜)15時〜18時

場所:早稲田大学人間総合研究センター分室(高田牧舎2F)

講師:

 西尾千尋氏(東京大学大学院 学際情報学府博士課程):

   専門は発達心理学、生態心理学。家庭での自然観察をベースに、乳児の行為の発達を研究している。

 外山紀子氏(早稲田大学人間科学学術院)

 高梨克也氏(京都大学大学院情報学研究科)

 高田明氏(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)

 

講演タイトル:

 歩くことと運ぶこと:生活環境における物との関わりが乳児の独立歩行の発達に果たす機能

概要:

 (西尾)人の生涯を通して様々な行為の基盤となる直立での歩行の獲得は、初期の運動発達の中でも重要な出来事である。従来、力学的な側面から多く研究されてきた歩行の発達だが、独立歩行の開始は、身体の力学的変化だけではなく、行為の性質の変化をもたらす。本発表では、家庭における乳児の運搬の事例研究を通して、歩行の発達と、遂行的な行為の発達の関係について検討する。様々な物にあふれる環境である家庭での物との関わりに着目し、どこにどのような物を運ぶのか、という点に着目した事例検討を行う。

 (外山・高梨・高田)保育園ゼロ歳児クラスの縦断観察データに基づいて,ハイハイからつかまり歩き,歩行という移動運動の発達と,物をめぐる社会的相互交渉との関連性について報告する。

 

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第28回からだと発達研究会のご案内


 

日時:2018年10月20日(土曜)15時〜18時

場所:早稲田大学人間総合研究センター分室(高田牧舎2F)

 

講師:高橋節子先生

ご略歴:お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科博士後期課程修了.

 博士(学術, 2014年).

 現在,お茶の水女子大学,芝浦工業大学非常勤講師等.

 専攻: 環境心理学,建築学,都市社会学

 著書: 『幼児教育のための空間デザイン-モンテッソーリ教育における建築・設備・家具・道具』(風間書房,2018年)

 

講演タイトル:

 子どもの発達を支える物理的環境とは何か-モンテッソーリ教育に学ぶ

 

講演概要:

 物理的環境は,子どもの発達をどのように支えるのだろうか。幼児教育施設における環境を,「人とモノ」という対の環境で考える場合,これまでは主に人的環境が重視され,物理的環境が検討されることはほとんどなかった。しかし,物理的環境も,子どもの育ちを支えるものとして重要ではないだろうか。

 今回は,モンテッソーリ教育の分析を通して,子どもの育ちを支える物理的環境について考えていく。マリア・モンテッソーリはモンテッソーリ教育において,幼児教育における物理的環境(建築・設備・家具・道具)の重要性を説き,極めて具体的に物理的環境のあり方を提案した。モンテッソーリ教育に関する3つの分析(モンテッソーリの思想分析,園舎の事例分析,日本のモンテッソーリ保育所の調査)から,人とモノとの相互交渉(トランザクション)について考察し,物理的環境が子どもの育ちをいかに支えうるのかを議論したい。

 

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第29回からだと発達研究会のご案内

 

どなたでも参加自由です(無料)。

 

 

 

日時:2019年2月9日(土曜)15時〜18時

場所:早稲田大学26号館1102会議室 ※いつもと異なりますのでご注意下さい

   アクセスhttps://waseda.app.box.com/s/ctvnsi6nckz4yk9kkrch64av0od0ai9t

 

 

講師:境愛一郎 先生

 

略歴:広島大学大学院教育学研究科教育人間科学専攻 博士(教育学, 2016年).

 

 現在 宮城学院女子大学,教育学部教育学科幼児教育専攻

 専攻: 保育・幼児教育学

 著書: 『保育環境における「境の場所」』(ナカニシヤ出版,2018年)

 

講演タイトル:「境の場所」の柔軟性・あいまい性が子どもの活動や関係性にもたらすもの

 

講演概要:

 我が国の保育所・幼稚園の実践は、保育室と園庭という「主要な場所」を中心に展開されているといっても過言ではない。このような構造は、内外の「主要な場所」同士を円滑に結ぶための「境の場所」を求め、結果としてテラスと呼ばれる縁側状の半屋外空間が普及するに至った(永井, 2006)。こうしたテラスは、通路であると同時に留まって活動ができる場として日常的に利用されている。

 

 ところで、テラスと類似した特徴をもつ家屋の縁側については、内外のどちらにも拡張可能な柔軟性を持つ(ムーサス 2008)、集団と個人あるいは公と私が溶け合う(黒川 1996)、物理的な配置を超えた所属や移動の体験が生じる(Lazarin, M. 2010)といった機能を有することが指摘されている。これらは、「境の場所」であるが故の柔軟性やあいまい性が、居住者に意図的あるいは無意図的に利用されたものといえる。ともすれば、同じように内と外を隔て、時には玄関や通路、時には生活空間や遊び場ともなる保育施設のテラスにおいても、そこでしか叶わない居方、そこだからこそ発生する活動や関係性があるのではないだろうか。

 

 本発表では、筆者が行ったフィールドワーク等の結果をもとに、「境の場所」としてのテラスが、子どもの日常生活や遊び、他者や空間との関係性に対して果たす機能(例えば、活動の選択段階における「つかず離れずの距離感」の活用など)について報告する。以上を通して、保育環境における子どもと場所の相互作用について幅広い視点から議論したい。


 

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第30回

 

日時:2019年6月29日(土曜)15時〜18時

場所:早稲田大学人間総合研究センター分室(高田牧舎2F)

(詳細はこちらhttp://www.waseda.info/S5846.html

 

タイトル

母子の身体接触遊びにおける相互作用の初期発達

 

講師:石島このみ先生

略歴:早稲田大学大学院人間科学研究科修士課程修了,修士(人間科学)。日本学術振興会特別研究員(DC2),早稲田大学人間科学部助手,東京家政大学子ども学部助教を経て,2019年4月より白梅学園大学子ども学部子ども学科専任講師。専門は,発達行動学・発達心理学。

 

概要:母子の日常場面において観察される遊びの中に,くすぐり遊びがある。くすぐり遊びの根幹を成す「くすぐったさ」は,自分で自分をくすぐっても生じることはなく,他者からくすぐられることによって初めて生じるという特殊な身体感覚である。他方で,身体接触を介してなされるものであるくすぐり遊びは,触れると同時に触れられているという同時双方向性や歓喜・回避(嫌悪)といった情動性を帯びている。これをふまえると,母子のくすぐり遊びを切り口として,乳児の身体を介した自他理解や社会性の発達について検討できると考えられる。本発表では,上記の問題意識をもって実施した母子のくすぐり遊びの縦断研究・横断研究について報告する。それを通じて,くすぐり遊びをはじめとした日常的になされる身体接触を伴う遊びが,身体性を基盤とした乳児の社会性の発達の重要な場となっている可能性について議論したい。

 

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第31回

 

日時:2019年8月31日(土曜)15時〜18時

場所:早稲田大学人間総合研究センター分室(高田牧舎2F)

(詳細はこちらhttp://www.waseda.info/S5846.html

 

タイトル:

幼児の食と睡眠に関する研究―生活者の視点による支援に向けて―

 

概要:

日本社会における経済格差の拡大,食産業のさらなる発展,夜型生活の拡大などの変化に伴い,子どもをもつ家庭での生活環境はますます多様化している.そのため,子どもの生活リズムの夜型化や食の簡便化が進んでいる.特に幼い子どもの生活には親・家族全体のライフスタイルが大きく影響するため,子どもの基本的生活習慣の改善は容易ではない.

 

本発表では,幼児の食と睡眠に関するその現状と問題を提示し,第3者からみれば問題ととらえられる行動の背景にはどのような生活があるのか具体的に検討していくことにより,その支援についても考えたい.

 

はじめに,福田から,幼児の起床・就寝,食事の摂取時刻など生活時刻と子どもの行動に関する現状とその問題を紹介する.続いて,子どもの生活時刻に影響を与える母子の食に関する現状とその問題点を食写真データも紹介する.データについては,未発表のものも交えて,多様な環境下で育つ子どもにどのような支援が必要か闊達な議論を行いたい.

 

発表者:

長谷川智子(大正大学心理社会学部教授)・福田一彦(江戸川大学社会学部教授)

 

ご略歴:

長谷川智子 博士(文学)

 

早稲田大学第一文学部心理学専修卒業,文学研究科心理学専攻博士後期課程修了.早稲田大学文学部助手,日PD,大正大学助教授を経て2008年より現職.主著として,『若者たちの食卓―自己,家族,格差,そして社会―』(共編著)ナカニシヤ出版2017年など.


 

福田一彦 医学博士

 

早稲田大学第一文学部心理学専修卒業,文学研究科心理学専攻博士後期課程単位取得退学.東邦大学医学部よDC,福島大学教育学部講師・助教授・教授,同大学共生システム理工学類教授を経て2010年より現職.主著として『金縛りの謎を解く 夢魔・幽体離脱・宇宙人による誘拐』(単著)PHPサイエンスワールド新書2014年,『子どもの睡眠ガイドブック:眠りの発達と睡眠障害の理解』(共著)2019年朝倉書店など.

 

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第32回

 

日時:2019年12月14日(土曜)15時〜18時

場所:26号館1103会議室(大隈タワー)

 

講師

萱村俊哉先生(武庫川女子大学)

 

講演タイトル

教育と心理臨床への発達神経心理学的アプローチ

 

概要

ジャクソニズム、ソフトサイン、離断仮説など、神経心理学には一般的な心理学にはみられない特有の思想やコンセプトがある。演者は長年、ASDをはじめ発達障害臨床の基礎研究として、このような神経心理学的なコンセプト、とくにソフトサインの発達的変容について研究を行ってきた。神経心理学は元来、失語、失行、失認などいわゆる「身体図式」障害を扱う臨床的学問である。ソフトサインも身体図式や空間認知の微細な障害のことであり、極めて「身体的」である。今回は、個々の研究に焦点化するのではなく、神経心理学、発達神経心理学の思想やコンセプト、あるいは検査法などを実際の教育の場や心理臨床の場に持ち込むことの意義について大局的にお話ししたいと考えている。

 

講師略歴

1990年 大阪市立大学大学院生活科学研究科生活福祉学専攻(人間発達学分野)後期博士課程修了(学術博士),1991年 武庫川女子大学文学部専任講師、1995年 同助教授、2007年 同教授,現在に至る。2000年~現在 学習障害に関する調査研究専門家チーム委員および巡回相談(神戸市教育委員会)、2004年~現在 神戸市教育委員会「こうべ学びの支援センター」医療教育専門相談員,2010 年~現在 和歌山県立医科大学衛生学教室博士研究員.。公認心理師、臨床発達心理士。専門は発達神経心理学

ド新書2014年,『子どもの睡眠ガイドブック:眠りの発達と睡眠障害の理解』(共著)2019年朝倉書店など.

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第33回

日時:2020年1月11日(土曜)15時〜18時

場所:早稲田大学本部キャンパス3号館607番教室(地図を添付しました)

 

講師:河原紀子先生(共立女子大学)

 

講演タイトル

幼児期における特定の「友だち」関係の形成と保育における集団づくり

 

概要

幼児は保育園や幼稚園の生活の中で他児と出会い、遊びを通して仲間との関係を形成していきます。その際の関係性は一様ではなく、単に知っているというレベルから、好意的で親密性を有するレベルまで様々です。「一緒に遊びたい」「仲良し」「好きな」といった特定の他児(「友だち」)との関係を築いていくことは自己の感情・行動を制御し、社会性を育むうえで非常に重要であると言われています。

現在、特定の「友だち」関係が3歳から就学までの幼児期を通じてどのように形成されるのか、そのプロセスについて、幼児へのインタビューと保育者による評価、保育場面の観察を通して検討しています。また、保育場面では、集団づくりの取り組みとしてグループ活動やリーダー活動などの観察も行っています。まだ途中経過ではありますが、それらの結果の一部について報告し、幼児期における子ども同士の関係づくり、集団づくりのあり方について皆さんと議論できればと思います。

 

講師略歴

早稲田大学人間科学学術院助手、共立女子大学家政学部児童学科専任講師を経て、現在、共立女子大学家政学部児童学科教授。臨床発達心理士。

著書『子どもと食:食育を超える(編著)』(東京大学出版会) 2013年、 『0歳~6歳 子どもの発達と保育の本(第2版)』 (学研教育出版) 2018年、 『発達保障論の到達と論点』(全障研出版)2018年など。

専門は発達心理学。

 

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第34回からだと発達研究会

 

日時:2020年12月26日(土曜)15時〜18時

場所:Zoomにて開催(開催日の2日前を目処に,参加希望の方々にアクセス方法を御案内します)

 

講師

金子守恵先生(京都大学)

 

講演タイトル

土器をつくる私の手:エチオピア西南部における女性土器職人による在来知の共有と配分

 

概要

発表では、エチオピア西南部に暮らす女性土器職人のライフステージに留意しながら、彼女たちの在来の知識の共有と配分に見いだされる特質をあきらかにする。発表者は、女性職人約60人を対象に、土器成形時における彼女たちの手指の動かし方(指づかい)を記述し、それを比較検討した。その結果、彼女たちは共通の20種類の指づかいをもちいながら、彼女たちが主張する「(自らの)手」にあわせた方法(身体動作の連鎖)で土器をつくりだすことが見だされた。これをもとに、私の手にあわせて土器をつくることと職人たちのパーソンフッドとの関わりについて検討する。

 

略歴

2005年京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科(ASAFAS)博士課程修了(博士), 2006年日本学術振興会特別研究員(PD)、2008年京都大学大学院ASAFAS特任助教、2011年京都大学大学院人間環境学研究科(文化人類学分野)助教、2016年京都大学大学院ASAFAS准教授、現在に至る。専門は人類学、アフリカ地域研究。主な著書『土器つくりの民族誌』2011年昭和堂、Reconsidering Local Knowledge and Beyond (African Study Monographs Supplementary issue No.59)(共編著)2020年, An Anthropology of Things(共著)2018年Kyoto University Press and Trans Pacific Press, African Virtues in the Pursuit of Conviviality(共著)2017年Langaaなど

 

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第35回からだと発達研究会


 

日時:2021年2月20日(土曜日)15時〜18時

場所:Zoom

講師:麻生典子先生(神奈川大学人間科学部)

御略歴:助産師として周産期の病院臨床に従事した後、臨床心理士を目指す。療育機関や子育て支援機関の勤務を経た後、現在は市区町村の虐待担当の非常勤臨床心理士と認定保育園の巡回コンサルテーションを行っている。養育困難なご家族に対して来談面接や訪問、ペアレントトレーニングなどの心理支援を行っている。2015年特定非営利活動法人親と子のタッチ研究会を設立しその代表を務める。2020年子どもと家族、地域の交流拠点「たっち and はーと」をオープンした。心理学(博士) 臨床心理士 公認心理師 家族心理士

タイトル:家族関係支援における身体接触のもつ潜在的可能性:アフターコロナを見据えて

概要:本講座は、身体接触の潜在的可能性に関して2つの視点から講義を行う。第1に、母子関係における身体接触の役割である。主に乳幼児期の母子関係の身体接触の先行研究を概観しながら、筆者のこれまでの研究と身体接触を用いた親子関係支援プログラムであるファンクショナルタッチペアレンテイング(FTP)の実践的取り組みの成果をご紹介する。第2に、身体接触が家族や対人コミュニケーションに果たす役割である。コロナ禍で顕在化しつつある、家庭内暴力や虐待、ゲーム依存等の様々な家族問題に注目し、家族の近接性が家族間葛藤を高めるメカニズムを考察する。アフターコロナを見据えながら、家族や対人コミュニケーションの親密性を構築する支援ツールとして、身体接触のもつ様々な可能性を、皆さんと共に活発な意見交換ができれば幸いである。

第36回からだと発達研究会

日時:2021年6月26日(土曜日)15時〜18時 オンライン開催
講師:市川 熹(あきら)先生
講師略歴:千葉大名誉教授、早大応用脳研および人総研招聘研究員。工学博士。信学会フェロー。慶大工電気卒、日立中研を経て千葉大大学院教授、早大教授、京都工芸繊維大特任教授、科研特定領域「情報福祉の基礎」領域代表、電子情報通信学会や人工知能学会の理事、音響学会、HI学会等の評議員などを歴任。信学会福祉情報工学研究会や発達障害支援研究会などを創設。音声や手話、指点字など対話言語の分析や障がい者支援機器を開発。総務大臣表彰、音響学会功績賞など受賞。

 

講演タイトル:耳と目に障がいのある先天性全盲ろう児の言語教育事例の紹介と課題
概要:視覚と聴覚機能を完全に失っている先天性盲ろう児は言葉を自然に獲得することができない。1950年ころから10年以上かけて男女2名などの先天性盲ろう児の生活・言語訓練が県立山梨盲学校で触覚を用いて行われ、10万点を超える膨大で世界的にも貴重な記録や教材が残されている。資料は戦後の物資の乏しい時期に作成されたため破損に瀕しており、電子化保存のボランティア活動を進めながら、成長経過の分析も試みている。教育・訓練を指導・担当された梅津東大教授(故人)や志村教諭には概念獲得までの経過に関する詳しい論文や著書があり、教授は「定型発達児の言語獲得プロセスの低速再生を見ているようだ。言語の獲得前の状況でも物理信号のみで概念は形成されている」と述べられている。しかし論文以降の講演会記録では代数処理まで出来るようになったことにも触れられているが、概念獲得以降の言語獲得までのプロセスに関する具体的内容には、上記資料には含まれているものの、ほとんど言及されていない。電子化データがそれらのプロセスの検討や、さらに広く活用されることを期待している。なお最近、実時間の「対話」が言語の原点であり、言語の備えるべき様々なレベルの要件が現れていると考え、対話の実時間性を可能にするモデルを着想した。先天性全盲ろう児の視聴覚情報や実時間対話条件の欠落環境や、さらには他の全盲ろう学生の経験報告なども交え、言語機能獲得への影響などについて考えてみたい。

第37回からだと発達研究会

日時:2021年9月4日(土曜日)15時〜18時 オンライン開催
講師:今川恭子(いまがわ きょうこ)先生(聖心女子大学 現代教養学部教育学科 教授)
講師略歴:東京藝術大学音楽学部楽理科卒業,同大学院音楽研究科修士課程修了,同大学院音楽研究科博士後期課程単位取得満期退学。乳幼児期を起点とした音楽的発達と音楽学習に関する研究を中心に,保育,学校教育現場から家庭までさまざまなフィールドで研究を進めている。主な著書に,『わたしたちに音楽がある理由(わけ)―音楽性の学際的探求』(音楽之友社),翻訳書に『絆の音楽性―つながりの基盤を求めて』(Malloch & Trevarthen, 2009. 共同監訳,音楽之友社)。そのほか,『乳幼児の音楽表現―赤ちゃんから始まる音環境の創造』(2016年,編著,中央法規出版),『音楽を学ぶということ―これから音楽を教える・学ぶ人のために』(2016年,監修・共著,教育芸術社),『戦時下の子ども・音楽・学校』(2015年,共同編著,開成出版),『子どもの表現を見る・育てる—音楽と造形の視点から』(共著,文化書房博文社),『音楽する子どもをつかまえたい—実験研究者とフィールドワーカーの対話』(共著,ふくろう出版)など。

講演タイトル:コミュニカティヴ・ミュージカリティ―音楽的な観点から見たその意義と課題―

講演概要:マロックMallochとトレヴァーセンTrevarthenの編著書『絆の音楽性-つながりの基盤を求めて(Communicative Musicality: Exploring the Basis of Human Companionship)』の邦訳は2018年4月に刊行された。600ページを越えるこの書が版を重ねていること(現在3版)は驚きであるが,それはこの書が「音楽性(ミュージカリティ)」と題しながらも音楽を越えた(もしくは音楽以前の)「人と人とのつながり」すべての根底たるものを捉えているからではないか。
音楽を専門とする立場から同書の翻訳に携わった一人である筆者は,生後1年間を中心に乳児―養育者間の音声コミュニケーションを分析し,タイミングやピッチ輪郭の呼応,ナラティヴの醸成などといった点でトレヴァーセンらのいう音楽性の発現を確認してきた。しかしここで次のような問いが生まれる。我々が文化の中に共有する実践の集合体たる「音楽」と,彼らの言う「音楽性」とはどう繋がりどう隔たるのか。母子間に双方向的に発現する「音楽的やりとり」と文化的実践としての「共に音楽すること」とはどう繋がりどう隔たるのか。答えに至るには,音楽のみにとどまらない課題も多々ある。これまで行ってきた乳児―養育者間コミュニケーションの分析を紹介しつつ,文化的実践としての歌に向かう道筋について考えたい。

第38回からだと発達研究会

日時:2021年11月6日(土曜日)15時〜18時 オンライン開催
講師:巖淵 守(いわぶち まもる)先生(早稲田大学 人間科学学術院 教授)
講師略歴:大阪大学大学院基礎工学研究科修了。University of Dundee大学院修了。博士(工学)。発話が困難であるなど,コミュニケーション障害がある人に対する技術を用いた支援領域である「拡大・代替コミュニケーション(AAC)」やICTを利用した障害のある人の学びの支援に関する研究を中心に行う。主な著書に,『福祉機器の選び方・使い方 福祉に役立つ情報機器・電子機器編』(2020年,共著,保健福祉広報協会),『黙って観るコミュニケーション 重度・重複障害の子ども達とのコミュニケーションのポイント』(2016年,共編著,atacLab),「役立つはずなのに使われない… --支援技術の開発と利用の狭間」(2012年,単著,『バリアフリー・コンフリクト』中邑・福島編,東京大学出版会)など。

 

講演タイトル:重度・重複障害のある子ども達のコミュニケーション支援と技術利用
講演概要:近年の医療技術の進歩により,これまで生きることが困難であった子ども達が生きられるようになり,重度・重複障害のある子どもの数が増えている。医療的ケアが必要な子どもの数は,ここ10年の間に倍増した。また,障害の重度化が進んだことで,こうした子ども達が持つ力を育てる・引き出すことも益々困難になりつつある。彼らの残存能力を引き出していくためには,それぞれの子どもに合わせて効果的な働きかけを行うアプローチが重要であり,そのためにも客観的に子どもの認知や行動の実態を把握していく必要がある。誰もがこうした観察・評価を学校や家庭で日常的に行えるようにするために,最新のICTが活用できる。IoTやAIなどの新たな技術とともに人間の能力を凌ぐ精度でのセンシングやデータの収集・分析が可能になりつつある。重度・重複障害のある子ども達に対するミュニケーション支援の話題を中心に,現在求められる拡大・代替コミュニケーションの新たなアプローチやそのための技術利用について考える。

第39回からだと発達研究会

2022年3月12日(土曜日)15時〜18時 オンライン開催
講師:荘島 幸子(しょうじま さちこ)先生
 (帝京平成大学 健康メディカル学部 講師)
講師ご略歴:京都大学大学院教育学研究科 博士課程修了。博士(教育学)。臨床心理士、公認心理師。
性的マイノリティのなかでも特に、望む性を生きるトランスジェンダー者の人生の経験や発達経路に関心をもち、事者とそのご家族に縦断的にインタビューを行ってまいりました。人生経験への意味づけ、自己の編成プロセス、身体やよそおい実践といった側面に関心を持ち、ついて主に質的な分析を行っています。
主な業績に、『トランスジェンダーを生きる当事者と家族-人生イベントの羅生門的語り』(2008年, 質的心理学研究, 7, 204-224)、『「私は性同一性障害である」という自己物語の再組織化過程-自らを「性同一性障害者」と語らなくなったAの事例の質的検討』(パーソナリティ研究, 16(3), 265-278)、『ジェンダーワークとしてのよそおい』(印刷中, 単著, 『よそおい行為の心理学』荒川・鈴木・木戸編, 北大路書房)

ご講演タイトル:トランスジェンダー者の「望む性を生きる」という実践
ご講演概要:発表では、性別二元論からこぼれ落ちている境界領域に生きる人々の存在について取り上げる。性同一性障害/性別違和と呼ばれ、診断や治療の対象となって久しいが、当事者にとってそれはスタートになったとしてもゴールとなるわけではなく、現在でもさまざまな問題を抱えている。彼らの身体をめぐる語りは、ときに了解が不可能なほどに苦悩にあふれている。それは自身の身体に対する強烈な違和感であり、心と身体の「ずれ」である。「ずれ」を解消するための涙ぐましい努力は、身体に痕跡として残り、望みのアイデンティティをなんとか支えているようである。身体そのものを加工したり、外見を巧妙によそおうことによって、性別をカムフラージュし、「擬態」し、「埋没」するという身体をめぐる実践は、自己、他者・社会からのまなざしの境界上でつねに揺動している。性別移行、パスの実践とは、すなわち「私にとってのあるがままの身体」と「他者からみられるものとしての私の身体」とを限りなく一致させようとする実践(藤高, 2019)である。このような身体や社会とのかかわり方はトランスジェンダー者には限らないだろう。トランスジェンダー者は身体をどのように意味づけ、取り込み、社会のなかで生きていこうとするのか。日常生活のなかでふるまい方を臨機応変に選び取る、当事者の「性の境界を生きる術」(浮ヶ谷, 2010)をつぶさにみていくことで、彼らの自己のありようや発達について考えてみたい。

第40回からだと発達研究会

日時:2022年6月4日(土曜日)15時〜18時 オンライン開催
講師:山﨑寛恵先生(東京学芸大学教育学部特任准教授)
御略歴:専門分野は生態心理学,発達心理学。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得後退学。博士(教育学)。お茶の水女子大学人間発達教育科学研究所研究協力員を経て現職。家庭や乳幼児施設での子ども達の日常生活を観察し、発達を促進する環境について研究している。
出版物:『発達保育実践政策学研究のフロントランナー 第1巻 保育の実践科学』(分担執筆 第8章,2021,中央法規),『知の生態学的転回1 身体:環境とのエンカウンター』(分担執筆 第2章,2013,東京大学出版会)、DVD『ふれあうことからはじまる子育て』(共同監修,2021,岩波映像)など

講演タイトル:『子どもは何に出会うのか―ここからの知覚とレイアウト』
講演概要:生態心理学(アフォーダンス理論)では、動物(人)と環境の出会いencounterのことを「知覚」と呼びます。空気中に満ちている光、振動、化学物質、そして直に接触したときのモノの揺れを情報とし、豊かな環境の性質と自身の身体の可能性に出会い、知ることです。生まれてから死ぬまで知覚はずっと続きます。日常生活に充満しているこういったエコロジカルな情報を、子どもたちはどのように感受しているのでしょうか。そして、そもそも私たちが住んでいる場所には、エコロジカルな情報がどのように存在しているのでしょうか。子どもの日常行為と、彼らが住んでいる場所からそれらについて考えたいと思います。
 

第41回からだと発達研究会

日時:2022年8月20日(土曜日)15時〜18時 オンライン

講師:甲田菜穂子先生(東京農工大学大学院農学研究院准教授)

ご略歴:専門分野は人と動物の関係学、心理学、福祉学。大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程行動学専攻修了。博士(人間科学)。関西福祉科学大学健康福祉学部専任講師を経て現職。日本での第一世代として、人と伴侶動物の関係分野を学際的に開拓してきた。

出版物: Conversion in depictions of anthropomorphic animals in picture books. Int. J. Lit. Arts 9: 374-383, 2021. Dogs and cats and their relationships with humans as depicted in picture books. Int. J. Lit. Arts 9: 63-69, 2021. ドッグランにおけるイヌの要注意行動. Anim. Nurs. 14: 1-5, 2009. ドッグランにおけるイヌと飼育者の行動. 動物心理学研究 59: 47-55, 2009など

講演タイトル:『人とイヌの関わりと動物絵本』

講演概要:人と動物の関係学は、人と動物の共生のために、様々な分野の研究者や実践家が参画する新しい分野で、日本には1990年代に入ってきました。農業高校では、一部が科目として教えられています。今回は、都市公園に設置されたドッグランにおける人とイヌの関わりの行動観察結果と、動物絵本における人と動物の描かれ方の定量的分析結果について、2本立てでご紹介します。心理学の広がりの可能性として、応用科学を扱う農学部で人と動物を研究するとどうなるか、学際的研究とはといったことについても触れられればと思います。

第42回

日時:2022年11月26日(土曜日)15時〜18時 オンライン開催
講師:広瀬美和先生
(城西国際大学福祉総合学部福祉総合学科子ども福祉コース)

御略歴:
専門分野は発達行動学・保育学・幼児教育学。早稲田大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了。博士(人間科学)。富山短期大学幼児教育学科専任講師を経て現職。

御講演タイトル:「いざこざ・仲直り─いざこざは反社会的?仲直りは向社会的?」
概要:子ども同士の社会的葛藤はすでに重要な社会化の機会だと理解されるようにはなっています。しかし依然親たちは子どもたちの自己主張を必要と認識しつつも歓迎はせず、あまり強化はしない傾向にあります。対人的葛藤処理(仲直り)についても、他の文化と比較すると日本の親は、他の文化で自己への関心、自己主張(アメリカ)他者への配慮(中国)が重視されるなか「関係維持」を重視しているようです。
学部生の頃、けんかは本当にネガティブなものなのか?仲直りは一見思いやり行動のようだけど本当にそれだけだろうか?という関心から観察を始めました。大人がとらえている子どもたちと実際の子どもの行動はずれているし、大人側の望ましさともずれています。けんかか否かの判断も大人よりも子どもの方が優れているという知見もあります。大人から見えやすい罵倒や抗議、謝罪や慰めといった言葉でのやりとり以外のものが子ども同士のやり取りには介在するからでしょう。
保育園や幼稚園での子どもたちのいざこざ・仲直りの観察で見えてきたこと、葛藤処理の多文化比較の結果、いざこざ・仲直りでの言葉以外のやりとりなどを紹介できたらと思います。

 

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